Miz 5/深水遊脚
 
薫子らしく、読む相手を選ぶ文章になっていた。言葉を宛てた本人にしか伝わらないように書かれていた。

「マミちゃん、来てたんだね。」
後ろから話しかけられた。私は慌てて立ち上がり、振り向いた。
「澄花さん、おし、お久しぶりです。」
薫子の母親、橘澄花さん。いまは結婚前の姓を名乗っていた。私がこれから連絡をとり、会おうとしていた人だった。そして今日は、会うだけでなく、いろいろ深く突っ込んだ話をしようとして、それまでに言葉をまとめるつもりだった。その人が、目の前にいる。
「何よ、お久しぶりでもないでしょう?よくすれ違うし挨拶してくれるじゃない。」
「いや、その、ちゃんと、ちゃんとお話しした
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