凶行/アマメ庵
昼下がりの私鉄は、混んでるでも、空いてるでもなく、ちょうど座席が埋まるくらいの乗客だった。
急行は止まらない駅に停車すると、トレンチコートが乗り込んでくる。
ざんばらな髪。
マスク。
そして、右手に手斧を握っている。
乗客はおのおの下を向き、スマートフォンを弄っている。
彼に注意を払う者は、ひとりも無かった。
やがて列車は走り出す。
トレンチコートは、車内をゆっくりと歩き、OLの前で立ち止まった。
彼女は気に止める風もなく、スマートフォンで漫画を読んでいる。
トレンチコートは手斧を振り上げると、歯を逆さまに、OLのスマートフォンを叩きつけた。
OLはヒャっと悲鳴を上げ、ス
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