ただ、ちょっと泣きたかった だけ/南無一
 

友だちのなかの笑顔のわたしは
ほんとのわたしじゃありません
感嘆符ばかりの 上の空の会話
いつも気になるのは スマホのライン
ほんとの自分を置き忘れている

傷ついてなんかいません 
ただ、ちょっと泣きたかった だけ
涙をながせる自分がいることで
少し安心して
また明日からやっていけそうな 気がします

ウザい という一言で すべてを切り捨ててしまう日常
うわっ面ばかりの快活と
こころにもない相槌を繰り返し
繕う友だち関係だけ
大事に抱え込んでいる

悲しいわけじゃありません
ただ、ちょっと泣きたかった だけ
そんなふうに自分に言い訳して
睫毛を指で拭い 作り笑いの練習 しています

マジー・・・ウソー・・・ヤダー・・・
会話は決まって二語の応酬
シリアスな話は 軽く冗談でいなして
乾いた笑いの渦に紛れてしまえば
そこそこ陽気な気分に浸っていられる

辛いなんてことありません
ただ、ちょっと泣きたかった だけ
少しも悲しくなんかないのに 
ときどき わけもなく 泣きたく なるんです


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