月の光が降り積む夜は/イナエ
 
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す

月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた

就寝前に外の便所
白い庭に 竹林の人々の影 黒々と
体を揺すり 手を振ってぼくを招く
寒さに震え 恐怖に震え
白くなったぼくを
ガラス戸さえない便所の窓から
十六夜(いざよ)う月が覗いていた

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