虚空のひと/クロヱ
 
しの頭に置き
静寂を植え付けた


どれほど経ったか

「お元気ですか」

あたしは鈴の音のように絞り出した

老紳士は日向のように微笑み

「あなたは今も 宝物に見えます」

腕を広げて包んだ


目を開けると、老紳士はあたしを行き過ぎた

その後に、
懐かしい土の匂いがする気がした


あたしは花畑から繰り返し対岸に立っていた
「さようなら」と、花束を投げると
この虚空から戻っていった

あなたのいないこの世界で 
強く 思う
「あたしは 宝物だから」 
強く 生きる
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