虚空のひと/
クロヱ
しの頭に置き
静寂を植え付けた
どれほど経ったか
「お元気ですか」
あたしは鈴の音のように絞り出した
老紳士は日向のように微笑み
「あなたは今も 宝物に見えます」
腕を広げて包んだ
目を開けると、老紳士はあたしを行き過ぎた
その後に、
懐かしい土の匂いがする気がした
あたしは花畑から繰り返し対岸に立っていた
「さようなら」と、花束を投げると
この虚空から戻っていった
あなたのいないこの世界で
強く 思う
「あたしは 宝物だから」
強く 生きる
戻る
編
削
Point
(3)