こどものころの道/吉岡ペペロ
 
こどものころの道

それはまだ土を固めたようなのが多かった

そんな道がまだ残っていただけなのかも知れない

そんな道にあった水たまりが映していた空はきれいだった

青くて水色で白くて灰色でときには虹までかかっていた

虹は車かなんかの油だった

あのころ車は油を垂れ流して走っていたのだろうか

いや

水たまりにはネジが落ちていた

そのネジに付いた油が虹をつくっていた

懐かしい匂いがする

透明な黄土色が鼻の粘膜をすずしくする

首を掻き切られるとき目に映るのは悪夢ではなかった

火花散る崩れゆく景色でもなかった

まだ舗装されていないあのころの道だった









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