回想/大島武士
 
街に流れていた
聴いたことのない懐かしい曲を
大人になって初めて聴いた 次の日に
忘却の悪魔に逆らいつつ それを口ずさみ
大切な事を思い出していた

まだ若い
新たな世紀の時の中で
小さな国の土を踏んで
かつて確かにそこにあった
懐かしい 甘い痛みと 苦い悲しみを
そっと連れ去る 忘却の悪魔に逆らうように

電話口に モニター越しに
小さな声で囁き合って
僕らが生まれるずっと前の
汗の匂いと 宇宙の匂いを思い出しては

まだ対面したことのない
とても恐ろしいやるせない事と
まだ味わったことのない
とても暖かい優しい日々を描こうと

忘却の悪魔に逆らって
若い新たな世紀の時の
小さなさえない商店街で
囁くように歌いだそう
まだ聴いたことのない懐かしい曲を

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