夜の器/あるみ
 

ごはんできたよ と 声をかけても
テレビから離れられないでいる
夜の器に盛られた農場は テーブルの上で
少しずつ ふけていく


ブロッコリーの木に
間違えてよじ登った子豚は
降ろして と 私をじっと 見上げている
池の中に沈められたきのこは
溺れてしまうのは御免だと
ぶつぶつ文句を言いながら
岸のほうへたどり着こうとしている


そんな夜の器を見下ろしながら
私は深呼吸をして
思い留まろうと 抑え抑え
できるだけ安寧と静寂が 守られるように
保たれるように もう一度言う



ごはんだよ



しかしその声虚しく
農場は器ごと 更に音も
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