終ノユメ/ただのみきや
 
声が何度も響いてから
お腹の中へ すとん って なんだか身籠ったみたい
ええ もう艶めかしくて
わたし興奮してすごく変だったと思うんですけど
そんな自分を見ているもうひとりの自分がいて
まるで観音菩薩みたいに落ち着いていましたの
すると重力が傾くって言うのでしょうか
ご近所の噂話とか新聞の見出しとか
昔好きだった人がよく言っていた文明批判とかが
みんなお鍋を傾けたみたいに流れてしまって
わたしが過ごした時代も水没しちゃいました
誰かの眼球が小魚みたいに群れて泳いで行きました
あれきっと 未来を捜していたのでしょうね
いま思うと 難しい理由なんて誰も欲しくなくて
ただ少し
[次のページ]
戻る   Point(21)