宛て先/アンテ
郵便配達人は
来る日も来る日も手紙を配りつづけた
高い塔は目をこらしても先端が見えず
螺旋状の階段にそって扉が等間隔にならんでいた
郵便配達人は封筒の番地を探したが
扉の数字の順がでたらめで
なかなか目的の番号が見つからなかった
ようやく見つけても
住人は突然の訪問を責めたり
配達が遅いことを罵り
手紙を読みもせずに細かく破り捨ててしまった
郵便配達人が手紙の断片を集めて
苦労してもと通りつなげ合わせると
宛て先の番地は違う数字になっていた
この番地で手紙を待つ人がいるかもしれないと思うと
止めてしまうわけにもいかず
郵便配達人はまた階段を歩きはじめた
ところ
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