やまぶどう/竜門勇気
長い待ち時間の先に
何もない
暇つぶしに手にとった西遊記
辞書みたいな厚さも頼りない
どうしようか
やまぶどうはしゃべる
秋口の頃だったと思うけど
痛い痛いと言って喜んで
その先にズミの実があると茶化す
アテが外れてグミの渋い実をかじりながら
足元に野蒜の葉が萎れているのを見た
夜はそこまで来ていて
あけびの蔓が夕暮れにかかってぼやけている
呼ばれて部屋にはいると
不摂生をさんざん咎められる
僕が何をしたってんだ
今日まであんたに会わなかってだけだろ
あけびの蔓はしゃべる
こんな黄昏まで喜び勇んで遊ばなければ
甘い実に笑って黒い種を集めて
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