あなた、それは湯気。/ユッカ
故郷のようなひとがいる。そのひとを思い出すだけで、シチューを食べたような心地がする。ホタテやコーンなどといった、気のきいた具材の一切入っていないシチューだ。わたしはお椀から立ちのぼる湯気のようなものを、いつも体の真ん中に感じている。
あなたが土地であったなら、今すぐそこに帰るのに、あなたは土地ではない。ただ思い出すだけで、あたりいちめん白く染まり、息をするのも忍びない。あなた。それは湯気、このからだの輪郭。部屋いっぱいをあたためていく、おだやかな沸騰。わたしは車窓を曇らせながら、世界で唯一、大事なことに気づいていると思う。
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