Miz 2/深水遊脚
あるかもしれない。
「大宮さん、あの方はよくお店に来るんですか?」私は店主に聞いてみた。
「そうですね。よくいらっしゃいますよ。お客さまに声をかけて、何かを熱心に勧誘しているので、最初は注意したんですけど。営業妨害にはなっていないし、勧誘後のトラブルも全然ないので。それに、断られてもニコニコしていらして、それが自然だから。お店の名物みたいになっちゃって。」
「なんだか、不思議な方ですね。」
そのままコーヒーを飲み続けた。ここのコーヒーでも大宮さんの思い入れが特に強くて、私も気に入っているケニアの香りが、ぼんやりと思考の輪郭を描いていた。
(いまの話を受け止めてから、か。)
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