Miz 1/深水遊脚
よ。やっぱり本物だ。すごい、すごいよ。ほら、震えが止まらない」
男は興奮して、いつの間にか私の両肩をつかんで揺すった。たまらず目をそらした。視線の先には、いつもお喋りをする珈琲店の女性店主がいた。いつもの落ち着いた立ち居振舞いは崩さなかったが、ひとこと鋭く言い放った。
「お客さま!」
男はすぐに肩の手を外した。顔馴染みでよかった。店主が女性でよかった。珈琲の余韻を邪魔された不快感がふっと軽くなった。でも店主はこのやり取りそのものにはあまり驚いていないようにもみえた。
私は落ち着きを取り戻して、肩の手を外した男に伝えた。
「あの、せめてちゃんと自己紹介してください。」
「
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