完成しない今/ベンジャミン
 
建築現場の鉄骨が
空の重さに耐えている

昼下がり
子供たちがホースで虹をつくる
二階のベランダから身を乗り出す猫
視線の先には
鳥が羽を休めている

鉄骨が発する低い唸り声が
体の芯まで響いてくると
虹は消え
鳥も猫も子供たちもいなくなってしまった

やがて
どっしりとした建造物ができて
空の重さも感じなくなるだろうか
そこに鳥が巣をつくるとき
見つめる猫はどこへいったろう
虹が伸ばした大きな手に
子供たちは気づくだろうか

巨大な鉄骨が打ち込まれるたび
その衝撃に似た
何かが
作られ
崩れてゆく

剥き出しの鉄骨は
自分がどうなってゆくのか
知らぬまま

それでも
鳥や猫や虹や子供たちを
夢に見ながら探し続ける

完成しない今を作ろうと懸命なのだ
きっと
僕も






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