ヨハネスの少女/藤原絵理子
 

揺れた 真珠の耳飾り 不意に
きみが撮った あたしの写真
声をかけられて驚いた 振り向いたとき
真実の醜さなんて 知らなかった頃


夢や希望は 歪んでいなかった
青空は澄み切って 雨を忘れていた
風はやさしく 雛罌粟を揺らせただけで
あるがままの姿で 手のひらに載っていた


身を飾ることに 夢中になって
いつの間にか 華やかに彩色されて
透明な白い少女は あたしから 去った


雑然と積み重ねた本の陰に 悲しみの埃 机の端に
その悲しみは いとおしくて 拭き取れずに
たくさんの 溜息が積もっている


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