或る老人の話。/桜 葉一
毎朝、必ず同じ時間に決まったコースを散歩する老人がいた。
傍らには愛犬の「ユキ」
珍しく雪の降った朝、捨てられていたのを老人が拾ってきた犬。
今ではすっかりなついている。
春が過ぎ、夏がきて、秋になり、冬が訪れた。
ユキが老人の家に来て1年が経った。
冬になっても老人は散歩を続けていた。
とても寒い日の朝だった。
いつものようにユキを連れて散歩をしていた老人は、
公園を通りかかったとき、
すすり泣くような声を聞いた。
老人が注意深く辺りを見まわすと、
すべり台の下に造られたトンネルの中に、
ダンボールに入れられた子犬が捨てられていたのを見つけた。
老人は3年
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)