ひとねむり。/梓ゆい
温かな人肌が
冷たく・硬くなっても
置いた手の感覚が無くなりそうになっても
その場から離れることは出来ない・・・・。
(あったかいなあ。お父ちゃん・・・・あったかいなあ・・・・。)
瞼に落ちた涙は
まつげと瞳の境目に吸い込まれ
少しずつくぼみ始めた目に
染み込んでゆく・・・・。
昨日より冷たくなった父の顔。
そこに置いた両手の感覚を奪い
しわとくぼみに水たまりが出来た・・・・。
硬くなった肌は
暖かい手で触れてもほぐれずに
聞こえていたはずの寝息が
いつ止まったのかも
覚えては居ない。
(冷たい。冷たい。お父ちゃん冷たい。。。)
水たまりが一つ流れ出し
口元をつたって
首の後ろに染み込んだ。
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