淘汰/竹森
 
濁を吐き出せ。覗け、恋人の黒い瞳の奥底まで。それは目の前の谷よりも深くまで抉れているか?無限をそこに宿しているか?目の前の恋人よりもその向こうの谷底を恐れるくらいならお前達の絆や決意とやらは形式の一環に過ぎない。お前達は恋人とではなく形式と結婚しようとしているのだ。愛を汚すな。俺がその場に居たらお前たちを底無しの谷底に突き落としてやる所だ。淘汰、淘汰、淘汰。

そうして谷底の暗闇に眠る太陽の子の餌になれ。太陽の子はいずれ谷底から目覚める。彼は少しずつ日の出を喰らって彼自身の日の出の時を待っている。既存の太陽の、永久の皆既日食が合図となる。彼は淘汰されるべき人間どもから「救世主」と呼ばれる。その
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