下書きでおわる/北井戸 あや子
 
また
死に損なった

農薬の量を
少し怖気づいたせいだろうか

うまく見えない天井を眺める

自室の机の上の遺書はまだあるのかな
誰か読んだのかな
ああでも生きてたら遺書とは言わないか

死なないかぎり
血を滲ませて紡いだ言葉は

その紙は

僕が死ななければ
遺書になれる日は来ない
永遠に、来ない

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