囲炉裏の上/藤原絵理子
 

骨だけになった 樹の群れは
古い写真の中で 諦めている時計に似て
遅れていく時刻 ついさっきまで耀いていた
枝の露は 跡形もなく消えた


誰かからの便りを 待っている
いつか訪れる その日を 待つように
生きることを繋ぐための 取るに足らない
予定を書き込む 茶色い手帳は擦り切れる


もう苦しむことはない
もう美しい風景に 涙を流すこともない
もう 一切合切が 忘れ去られるのだから


さりげない 眉間の皺が 語る
控えめに 白い髪が 訴える
風雪という言葉が 天井に染み込んでいる

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