ふたつ さまよい/木立 悟
荒地の隅の
暗がりの
花火のように遠い花
すぐに見えなくなる
上を向いた眼
何も映さない眼
見えない何かが
のぞきこんでは過ぎてゆく
うたがひとつ
消えた子を尋ね歩く
切り株と切り株
夜から朝
霧は迷路から出られずにいる
花に照らされ
現われては消える荒地の隅に
光はふたつ残されて
壊れた鈴を振っている
顔の無い人が
うなじをまさぐる
髪と背を覆う布が
色の無い羽になってゆく
迷路から出て
霧は蒼い
ふたつの雨が
光を濡らし
うたの傘の下
ふるえている
野に呑まれた家のなかに
金
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