節文祭/梼瀬チカ
神社の境内にほの赤い灯りがともる
はしゃいだ子供の声が響き
笑みを交わす老人
往来にまで届く賑やかな空気に
鳥居の中を覗く
カラメルや綿菓子の夜店がでて
ご祈祷の声が響いている
節分を思いだし去年の祓い札も袋にいれ境内
に入る
賽銭を入れ柏手を打っては次々に祈願する列
に並びながら
願い事は何がいいかと考えて
振り返ると護摩焚きの炎は高々と上がり
火の粉がちる
護摩焚きの周りに集まった人々の顔に赤い炎
がちらちらと映っている
口々に何か言ったり笑ったり炎に手をかざすのを見る
いつしか雪が降っているのに気づき
空を見上げれば
朗々と般若心経が響き渡り
境内にも「おにはそと」の声が聞こえてくる
炎はいよいよ火の粉を舞い上げ
高々と上がってゆく陽炎の中
立春を迎える最後の雪が溶け
たくさんの厄が燃えては天に昇り
長い冬に凍った人々の涙が蒸発して
湿った空気が大地を濡らし春の匂いを呼んで
来る
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