暗い虹/イナエ
 
込み這い回り
夢の芽を食い散らしていく

一九四五年晩春
猜疑心に唆(そそのか)されたレンズを前に
人々は夢の断片すら見ることなく
思考を断った頭脳に
眠りを閉じ込めていた

  二十一世紀を迎えたぼくの
  指先が引き寄せる電情網に
  砂漠を焼く炎が絡みついた夜
  亡骸となった岩礁の
  子宮に残した胞衣(なえ)が流れ出し
  蠕動してぼくに這い寄り
  時雨空に醸し出した
  虹の夢は赤黒く透けていく 

             蕊35号  
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