暗い虹/イナエ
 
灯火管制の都会の底では
光を漁って深海魚が徘徊している

魚卵たちの夢は皆カーキ色をおびて
時折光る虹色の粒は
懐疑が延ばす触手に喰われ
光彩を失う
幼魚は皆同じ方向を見てかたまり
群れを離れる好奇心は
小鮫達の監視網に捉えられ
岩礁に追いやられる

岩礁では寸断された肉片が岩の棘(とげ)に
垂れ下がりブルブル震えている
岩頭に捨てられた頭骨はひび割れて
空洞の眼窩を空に向け
雷雲に這う黒い銀色の
鮫の一群れを見つめている

硝煙に燻された虹の中を
ギラギラと降るガラスの粉は
岩盤を貫き皮膚に刺さる
ぼくの出す燐光を見つけた棘魚が
血管に潜り込み
[次のページ]
戻る   Point(13)