三番目の彼女(前編)/吉岡ペペロ
 
めて忘れないことが、思い出してあげることが、供養になるような気がした。
俺は風鈴を鳴らしたくなった。しゃべりかけたくなったのだ。
そんな気持ちになるのははじめてだった。
電子レンジが残りの時間を液晶で表示している。カウントダウンだ。
まだ4分少々ある。
俺は風鈴を手にとって鳴らしてみた。
すぐインコが鳴らしていた音色を思い出す。
俺が帰宅するとインコは風鈴をなんども鳴らして訴えてきた。
朝、カゴにかけていた掛け物をとり忘れていたりなんかしても、インコは激しく風鈴を鳴らした。
激務で家では寝るだけだったことが続いていた。
俺はインコの風鈴の音に包まれながら眠り、風鈴の音で目覚めた。
インコに時間をとって話し掛けたりもしなくなっていた。
エサと水だけを毎日新鮮にし、週に一度床の新聞をきれいにしてやるだけだった。
風鈴を鳴らしてしゃべりかけようとしていたのがまた申し訳ない気持ちになって泣いていた。
インコの名はルルと言った。
俺はまたルルに謝っていた。
スープを食べて家を出ようとしたときサエコの霊がそばにいるような気がした。




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