水たまりに沈めた手紙/竹森
 
差出人の欄には
「海」としか書かれていなかった
指紋の上に指紋を重ねて
いつか返事を書くものだろうと
まだ躊躇わずに口づけ出来た水たまりの
波紋の上に波紋が重なり
触れてはいけない気がしてもなお


太陽の昇る方から風が吹いて
沈む方へと去っていったの
私の背丈では届かないところで緑が揺れていると
届かないのに背伸びをしてしまうのはどうして


海に湖にダムに水たまりに水槽に
魚を沈めてみたけど足りなくて
それはまるで迷路でしたか ドミノでしたか
彼に彼女にあの日の公園の広葉樹にさえ真剣な顔で
問いただしてみたけど足りなくて
シーソーにブランコにジャングルジ
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