去り際。/梓ゆい
千切れた身体を引きずり
たどり着いた場所で
残った肉体を地中に埋めた。
遠くで呼んでいたはずの名前は聞こえなくなり
冷たい空気の元
よりよく澄んだ空を眺め
静かにたたずんでいる。
はるかかなたを見渡せば
昔見ていた風景は何一つ変わらぬまま
もうすぐ上へと行く
魂を見送りながら
だんだんと薄れて見えなくなった。
忘れていた物に導かれ
大切な物が見えたとき
別れ行くという寂しさが
じわじわとこみ上げる。
親しい者達への別れを述べて
上へ上へと向かってみよう。
次の生誕を
より良いものへするために。
日当たりの良い生家の縁側
風になびいた洗い立てのシーツ
この目と胸に刻み
小さな戸を閉めよう。
周りのもの全てに
感謝を示しながら。
戻る 編 削 Point(1)