去り際。/梓ゆい
 
千切れた身体を引きずり

たどり着いた場所で

残った肉体を地中に埋めた。

遠くで呼んでいたはずの名前は聞こえなくなり

冷たい空気の元

よりよく澄んだ空を眺め

静かにたたずんでいる。

はるかかなたを見渡せば

昔見ていた風景は何一つ変わらぬまま

もうすぐ上へと行く

魂を見送りながら

だんだんと薄れて見えなくなった。

忘れていた物に導かれ

大切な物が見えたとき

別れ行くという寂しさが

じわじわとこみ上げる。

親しい者達への別れを述べて

上へ上へと向かってみよう。

次の生誕を

より良いものへするために。

日当たりの良い生家の縁側

風になびいた洗い立てのシーツ

この目と胸に刻み

小さな戸を閉めよう。

周りのもの全てに

感謝を示しながら。




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