天秤。/梓ゆい
 
子供と呼ぶには

失礼だと感じ取った。

突き放してしまうのは

しこりが残るほど何かが重い。

抱きしめたいとは思っていても

震える両手はそれを許さない。

まっすぐな心を示されて

その目を見ることが出来ないのなら

情けない事この上無し。

「好き。」という一言は

贈られた瞬間に

ブラシの届かない汚れ箇所を

全て受け入れて洗い出す。

(駅まで、あと10分程度。)

冬の空気を浴びて

孤独に慣れた心は

手を振る身体を引き寄せる。

強く強く抱きしめた腕の中で

あるはずの身体が

ふーっと消えた。





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