腐る野菜/為平 澪
 
田舎からダンボールで送られてきた
白菜、大根、里芋に 手紙
走り書きで 手入れが行き届かなかった、という
詫び状が 一通

私が手伝っていた畑 耕していた土地を離れて
間もない冬の朝一番で 届いた野菜

ずっとこのアパートで暮らせたならば
食べきれた量かもしれないが
意識不明の父と交代で送られてきた 野菜
食べられないまま 実家に帰る

ごみ袋に さっさと仕舞えなかった それらが
日を追う毎に 臭いを放ち 黒いカビが生えていく
(父の体にも黒いカビが生えていたことは 知っていたのに)

ごみ袋には捨てきれない想い
ごみ袋では閉じたくな
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