腐る野菜/為平 澪
田舎からダンボールで送られてきた
白菜、大根、里芋に 手紙
走り書きで 手入れが行き届かなかった、という
詫び状が 一通
私が手伝っていた畑 耕していた土地を離れて
間もない冬の朝一番で 届いた野菜
ずっとこのアパートで暮らせたならば
食べきれた量かもしれないが
意識不明の父と交代で送られてきた 野菜
食べられないまま 実家に帰る
ごみ袋に さっさと仕舞えなかった それらが
日を追う毎に 臭いを放ち 黒いカビが生えていく
(父の体にも黒いカビが生えていたことは 知っていたのに)
ごみ袋には捨てきれない想い
ごみ袋では閉じたくな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)