闇/風船
戦争で全てを
失った男は
過去から決別する
には
黙って横たわっているしか
能が無かった
多くの者が
死んだ後
生き残った
男は
闇を睨みながら
生きていた
父の肩を
落とした
後姿は
空虚な心を
さらに直観的に
蝕んでいく
蝕まれる心を
手にぶら下げて
父の横に
闇を
睨んで
並んでいた
病んだ
闇に
見入られた
子供は
いくら遊び呆けても
父から見捨てられて
いくら叫ぼうと
父の閉ざした
闇は開かず
得体の知れない
不気味さが
残っている
今
底知れない
父の闇が
襲ってくる
午後の日溜りに
ただ、横になって
病んだ闇を
見つめている
僕は
蝕まれたまま
後姿を見せて
転がっている
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