一編のクラウン/ただのみきや
満たされない心でわたしが死ぬ日
糸の切れたマリオネットみたいに
小さな舞台に沈むとき
スポットは落とされ
たった数行のエンドロール
短い悲哀の微かな拍手が
最後の疎らなひとつの合掌が
過ぎ去り 静まる 間も与えず
新しい演目の幕が上がると
きっと人情芝居かロマンスが
観衆を引き付けて
欠けたまま震える幸福の影絵を
折りに詰めては持ち帰り
ああ寒くなったね ああ温かいね
人間らしさの悲喜劇を
スルメのように咀嚼して
もらいなみだで燗をつけるのだろう
そんな古風な感傷が今も大切で
食卓から絶やされることはないから
叙事と抒情がぶつかり渦巻く真夜中過ぎ
モダンを装うクラウンの
コートの中味は空っぽで
トランプみたいに顏顏顏が
抜け殻となって飛ばされて
街の灯りの届かぬところ
忘却行きのバスが鳴る
《一編のクラウン:2014年10月12日》
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