赤い山/竜門勇気
山の中で
君に似た狼を見たよ
嘘じゃないさ
探しに行ってみるといい
歯糞のような言葉
浅くて腐ってしまった湾
反吐が固まって
捲れなかったページのこと
靴底のことを考えながら
籐の椅子に座して君とやらを見る
赤い山が窓越しに見えて
その間にまた赤い山が続く
死んで去った奴らのことを愛して
生きたまま消えたままの連中を憎んで
そんなままなんかまだ錯覚が続くんだ
夢ん中で
俺に似た狼を見たよ
ほんとなんかじゃないさ
夢の話だよ 夢の中の
電話がなる
朝が来ている
ひとりごとが叫び声に変わっている
咳き込み唾を吐く
誰も来ない
誰も来さ
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