森へ 息へ/木立 悟
 





霧のなかの火を取り
むらさきの足跡を照らす
海の風が運ぶ白
夜へ夜へ向かう径


白壁に描かれた窓も
やがて異なる白に消えてゆく
虹が折りたたまれ 灰曇になり
夜にふたたびひらかれてゆく


舟に落ちたひとつの種が
樹となり舟底を貫いて
水辺を覆いつくしてゆく
葉も花も実もないひとつの樹


空の背をさすり
樹は元に戻らぬ青を見る
下り坂の空
負の青を垣間見る


光を撲つけだもの
雪ちらすけだものを
遠い二重の虹が見つめる
山脈のはざま
浮かぶ片目


またたいては去る多重の夢
涙ひとつに ひとつ息をし
多くの星に囲まれながら
けだものはむらさきをすぎてゆく





















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