初空のゆめ/木屋 亞万
 
の人が他の誰よりも気になり始め
この人しか自分に合う人はいないと思う
その人と出会うことによって恋を知り
自分自身とも必然的に向き合っていく

一年を終える時
それはあらかじめ定められた儀式的な死だ
あの頃がまた淡く遠く輝くようになり
この頃がまた一つ速度を上げて過ぎ去り
そのときが着々と迫ってくる

毎日ひたすらに繰り返されてきた日の出が突然に初めてのものとなる
生まれて初めて光を浴びたような気分になる
新しい年を祝い挨拶を交わす
吹き荒れる風すら生まれ変わったように思える
雪が降らないところにも初雪が降る

初めて日が傾いて地に沈み
布団での初めての眠り
生まれて初めてみたゆめは
ひとつも思い出せないが
寒さの中で少しずつ
温まりつつあるゆめは
今年を占う初めてのゆめ
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