中村梨々詩集『たくさんの窓から手を振る』について/葉leaf
ない。その代わり、それに類するような構造が見えてくる。
ナオちゃんがいうには、あたしたち自転車に乗って
ロシアの平原を突っ走っていたって
すごいねぇ、ロシアなんて行ったこともないし行きたいと
思ったこともないのに、ロシア
ロシアロシアロシア、あたしはもう駅とか空港とか
思い切り空とかすっ飛ばして、ロシアにいる
(「ロシア」)
この詩編に見て取れるのは、大人には理解不能な子ども独特の盲目さだ。「あたしたち」はよく知りもしないロシアのことで頭がいっぱいになってしまい、そこへ至る手続きや距離など無視されている。このような不条理な執着とエネルギーの爆発、大人である私
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