ベンガル/オダ カズヒコ
 



ジャングルの奥で虎を殺したことがある
映画みたいにこうさ
ダチョウは身振りで示す

いつも死と隣り合わせだった
まっすぐ伸びてゆく入道雲
ハウスの中のトマト
熱帯の乾燥させた豆 
コーヒーや萎びたピーナッツ
野菜スティックを齧るクリティカルな音
忘れられない記憶がハイウェイを中心とした市街へと
真っ直ぐ伸びていく

葉っぱの詰まった小さな巻紙を丸め
ダチョウはジュースのストローを取りそこね
スーツのズボンに派手に零し
ニヒルに笑い
肩をすくめ
両手に女を抱き寄せ
葉っぱを燻らせ

ジャングルの奥で殺したベンガルの虎の話を
膝の上に座らせたブロンドの女に
語ってきかせている

誰かが店のマイクの音量を利かせ
大音量でがなる
もっとマシな歌を歌え!
ダチョウは陽気に
しかし少し苛つきながら
怒鳴った
どうせ全部
デマカセに過ぎないと
街のみんなは知っている

ダチョウはブロンドとヤることしか
考えていないんだ
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