年末年始のご挨拶に変えて/ただのみきや
甘いヒューマニズムの脂肪を削ぎ落とし
骨すら残らず焼かれたとしても尚
飛べなくなった雁が足踏みに過ぎない歩みで
猛禽の前に姿を晒すように
プラカードも持たず
シュプレヒコールも上げず
銃で武装することもなく
己の生命を掲げ主張し続けるだろう
まだ見ぬものを
赤ん坊のように抱きながら
共感と利害は必ずしも一致しない
理想と現実は実体と影のよう
どちらがどちらかを決めるのは自分
とやかく言うのは他者
矛盾の油膜が覆った海で
それでもこどものイルカが遊ぶように
跳ね上る
落ちることを
繰り返す
終わりが来るまで
世界がひとつの終末へ向かって集約されて往く時代
世界はひとりの詩人の透明多面性により屈折分散する
《年末年始のご挨拶に変えて:2014年12月31日》
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