喪服の街/オダ カズヒコ
 


会社の上司が死んだので
葬式に顔を出した

式が済んだあと
住宅地の真ん中にある屋敷で
同僚と飲んだ

「世の中 何が起こるかわかりませんね」と
誰かが言ったので
あからさまになってはいけないことが
公になったような気がして
みんなが紙コップを握りしめ
思い思いに口に注ぎ込む

指にかけた共鳴用の弦が
びんと強く
弾かれたような気がして
「世界」というちっぽけな水溜りに
頼りなくぽつんと一滴
空気の粒が弾けたような気がした

ビルの重なりに
重たげな影の街のへりを歩く
喪服の僕らは
輝かしいはずの時代の扉を
またひとつ閉じこめたような気がし
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