夜とはばたき/木立 悟
人指し指
中指の息
硝子の欠片
それぞれの目に
異なる子のうた
うなじから背へ
ひろがる岩
空へ還る痛み
怒り 苛立ち
羽から心へ過ぎてゆくふるえ
花の雨のなか見捨てられ
目より高みのすべてを憎んだ
何よりも深く
自身を憎んだ
霜柱の顔が泣きはじめるとき
羽は無数なのにひとつで
風を矢に放ちつづける
岩門が夜に潤うまで
積み上げられ 崩れることなく
他を揺らし照らすうたの群れ
灯の浪のなか沈む城へ
繰りかえし突き刺さる闇飛沫
見えぬほど遠いはばたきから
絶え間なく暦が打ち寄せる
文字に生えた
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