洗練された実在しない生活の話/木屋 亞万
 
って
もっと早く知ることができたらよかったのに

夜が来て明日からまたしばらく自分の弱さと戦わなければならなくなっても
社会が厳しい仕事を突き付けて心を追い詰めてきたとしても
一つひとつの作業を淡々とこなしていけば
週末には成就した恋愛が待っている
君の笑顔で苦しかったことを吹き飛ばしてくれる
消えていくことがわかっている憂鬱は怖くはないよ
理不尽な要求も横柄な上司もふがいない失敗も
たった一つの深呼吸とともに踏ん張ることができるんだ
金曜日の夜に向かって確実に仕事を終わらせていこう
煙草を吸うために休憩していく同僚のように
君と電話したり君にメールしたりして
元気を補充したいと思うことがある
我慢しきれずに連絡してしまうこともあるし
君の写真を眺めるだけのときもある
いつでもそばに君がいる気がして日々は輝きを保っているんだ

洋楽の歌詞を訳したような日々が
この広い世界のどこかに存在しているかもしれないし
たとえどこを探したってそんなもの存在しなくても
洋楽を聴けば洗練された幻想が
日常を少しの間わすれさせてくれるはずだよ

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