洗練された実在しない生活の話/木屋 亞万
洋楽の歌詞を日本語に訳したみたいな
とても洗練されているけれど実在しない生活の話をしよう
朝が来てやけに真っ白な部屋
だれかが一晩眠ったとは思えないほど整ったベッドのなか
そばでまだ君が眠っているんだ
ベッドがきしんで君が起きないように体を起こして静かにカーテンを開けるんだ
この部屋はまだ朝が来たことに気づいていないみたいだから
どんなに寒い冬の日でも少しずつ夜は短くなっていくんだ
地球が首を傾げたまま太陽の周りをまわっているから
肥料の行き届いた花壇に水を撒くようにコーヒーを淹れよう
マグカップの周りで白い湯気が湖に浮かぶ霧のように渦巻いている
今日は仕事のことを考えな
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