ながい腕/
衣 ミコ
女がひとり
長い腕をいっぱいに広げ
羊を導いている
その盗人の手付き
理を持って国を逃れ
荒涼とした冬の山へと
低い草を刈りながら行く
その黙する細い背中は
重なる別れにも揺るがずに
眼差しは
雲に仕切られた空の色をして
遠い野の果てを見つめている
おまえ、まだ歩み
ひとたび手放した力を
その手に宿すなら
枯れた草間に隠れた野兎の
冴えた赤い眼を探すうちに
いつか夢見た春も咲こう
いつか
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