酒の功名/鵜戸口利明
 
人々は何かを語りあっていた
笑いながら
泣きながら
ときに真面目な貌して
どこかで共感しあっているのだろう、
愉しそうに喋っていた

けれど
ぼくには何を語りあっているのか
さっぱりわからなかった
独りであることを知った
中に入ろうとおもって
こちらから話を持ちかけてみたが
冷たい沈黙の空気が流れた

一瞬
自分は狂人なのではないかという気がした

だが
酒を呷ると
頭の中が爽快になって
それは
気のせいだとおもった
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