竹林の横道/游月 昭
それだけを呟いて走らせる。突然車窓が激しい光を放った。
蝉の声に包まれている。
暑くて全身から汗が滲み出ている。私の左腕に肌が触れた。顔に被せていた麦わら帽を取ると、綾が体を寄せて話し仕掛けようとしていた。
「ねえ、そろそろ行かない?随分汗かいたし。」
私達は浜辺に寝そべっている。
「え?どこに?」
と私が訊くと、
「もう!イ・キたいくせに。」
「ああ、そうか。」
と言うと、
「呆けたの?」
私は急ブレーキを掛けた。激しい衝撃に目を恐る恐る開けると、海と空のまぶしい青。海岸通りを交差し、車はガードレールを突き破って止まっていた。緊張から解かれた私は車を降りた。快晴の凪の海が出迎えている。振り向くと、落石防止の為にセメントで固められた斜面。竹林などどこにもなく、また、道は海岸通りのこの道一本であった。
「確かに、呆けたのかもな。」
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