雑詠/春日線香
 
も動けないほどに
風の刑、いちどきに寄せ





亀の甲羅を
こじ開けてやりたいと思って
ゆっくりと呼吸をはかりながら
横向きのその腹に
石斧をぐっと入れると
詰まった肉の間から
透明な血がしぶくばかり
流れるかと思えばそうでなく
黒豆がぎっしり
などというのも違って
では中に何があったかなんて
それだけは言ってはならないのだ





青首

頭の中の薄靄から
太い縞蛇が這い出てきて
首に巻きつき
鉄橋から吊り下げられる
必死になって腕を伸ばすと
虚空の布団の
奥で腕は
西瓜のような
青首を締めあげている
台所の
包丁の刃が冷えていく夜中
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