雑詠/春日線香
 
冬眠

河原に下る階段
平行して続くスロープを
後ろ姿で

陰に隠れて
シーソーが錆びてふらふらする
さっきここまで走ってきて
小学生が捨てた
くしゃくしゃになった絵が
束の間引っかかって
沈む

音楽は途切れて
いっぱいに伸ばした腕もとどかない
あたたかく乾いた土の下で
冬を





壁の前でひとり
どれほどこうしてきたのか
足には蔦が絡みついて
一歩も動けないまま
時間だけが過ぎていった
ここでこうして
月の中身が落ちてくるまで
口を開けて待ちつづけるのだ
爪も髪も伸びて
暗い竹藪になるまで
案山子の格好をして

一歩も動
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