恋短歌・十二首/游月 昭
暗闇に仄かに現れ散りゆくは張り付けの身のわたくしの恋
なにげなく挨拶がわりにキスをした君の肩さきこの手のひらで
ふくれたる下唇のたて皺に我を抑えし格子に寄りて
その指がふれるふれる瞬間に僕の穢れが暴かれるかと
俯いてはにかむ君を前にして僕らは二人焦点になる
透きとおるあなたの汗の滴るはコオリとけゆく檸檬のいろに
たまらなく好きだったから合わないと思いたくなかったもう会わない
ばか、と泣き、ばか、と笑いてばかと知りばかばかしきは我ばかりなり
別れると言うんだったら死んでやると言わず迎えた死んだような時
秋空の気まぐれに強い風巻いて君のマフラー朽葉の色に
通勤のあくびの涙に思い出すぬぐう仕草のさよならの人
葉のうへに置きたる露のひとしづくたもと離れて地にまがひけり
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