凡脳/游月 昭
暗号化されたアートなるものを
読む、観る、聴く
体の芯を震わせる信号は
アナフィラキシーによって増幅される
農夫は頭蓋骨に侵入するたび
種をまき、水をかけ、肥料をやる
育つ苗にそって道ができ門が現れ
悠々と収穫にいそしむ
私の農場にはまだケモノ道が幾つか
ときには農夫でない者が踏み荒らし
畑なのか荒地なのか分からない
よその畑から仕入れた苗は
作物だろうか雑草だろうか
やせ細って青白く枯れかかっていて
それでも身になれと噛みしだく
時折その一本に
幻覚のように現れる記憶を
スリットからのぞき見るとき
開放された世界の中心に輝く太陽が
私の道に曖昧な影をみせる
門をこじ開けるしかない凡人は
小さな発作を繰り返しながら
声をあげ、目をひらき、耳をすまして
薄暗い泥の中で純水になる
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